「ミーア、お前はどうしたい? 」
不意に父は私の方を真剣な表情で見つめた。
「どうって…………」
「小さい頃からお前は魔法士に憧れていたし、それに……母さんも」
「お母様……?」
そういえば、私の母親はどんな人なんだろう。
まだ会っていなかった事にようやく気付く。
まあ、コッチの世界に来てまだ間もないし、考える事がありすぎて両親の事まで頭が回ってなかったのだけど……
「そういえば、お母様は?」
「……お嬢様、奥様は……」
ルミエールは、珍しく狼狽えた様子で申し訳なさそうに頭を下げてしまう。
「そうか、それも忘れてるんだな……母さんが亡くなってもう2年だ……」
「あっ……」
冗談──
とは、今度はならない様だ。
「ごめんなさい……」
「なんでお前が謝るんだい?」
苦笑いした父は、ベッドから立ち上がり私の頭を優しく撫でた。
その時、何故か私はこの人が私のいや、リリアの本当に父親なんだという事を感覚で理解した。
「ともかく……魔法士は母さんの望みでもあったんだ……」
そうは言われても、私にはやはりよくわからないのだ。
なんせ、この世界にまだ来たばかりで、コレが夢か現実かも実のトコロまだ半信半疑だし……
そんな急に将来の事云々言われても、答えなんかすぐに出ない。
確かに私であって私である、リリアは魔法士に憧れていたのかもしれないけど……、だとしてもそんな男子生徒のフリとか私に出来るわけ……
「いや、出来るかも……」
「えっ?」
「へっ?」
「私、多分出来るかも……」
そうだ。
忘れていた。
こんな時こそ、私の趣味が役立つのではないだろうかっ!?
私の趣味──
それはコスプレ。
キャラになりきり、性別も種族も次元すらも超えてなりきる。
この世界には恐らくコスプレイベントも、コスプレという文化すらも無さそうだ。
それなら……
「私、今日から男になります」
始まりは好奇心と、何となく面白いかも?
というそれだけの理由だけだった。