そんな私に、隣の席の女の子が、
 「何読んでいるの?」と聞いてきた。
 女の子から初めて声をかけられた私は、赤くなって俯いてしまった。
 女の子は身を乗り出してきて、本のタイトルを確認した。
 「『人間失格』ね。ワタシも太宰治が大好きで、特に『人間失格』が好きなの」
 女の子が嬉しそうに言った。
 女の子が太宰治を知っていたことが意外だった。
 女の子は、どちらかと言うと活発な感じで、太宰を読むタイプには思えなかった。