その頃の私は心を病んでいた。
 そのことを誰にも相談できず、悶々と日々過ごしていた。
 ただ一人の理解者であった母親は、三年前に死んでいた。
 
 私は一人っ子だった。
 私は病的な自意識に悩まされていたが、その原因が父親にあると、憎んでいた。
 私は生きることが苦しく、死にたくて仕方がなかった。
 
 学校でも誰とも話さず、太宰治ばかりを貪る様に読んでいた。
 高校三年の大学受験を控えた秋になっても、太宰の小説ばかりを読み続けていた。