「単刀直入に言う。俺は父親を殺したい」
青年が話すまでに時間はかからなかった。
相当の覚悟を持ってきたのだろう一字一句ハッキリ聞き取りやすく告げてきた。
視界の端に入った琥珀が死人のように真っ青な顔をして小刻みに肩を震わせている。
琥珀にとってはかなりショッキングな言葉だったのだろうか。
「琥珀、部屋の奥に行ってていいよ?」
優しく促すも琥珀は無言で何度も首を横に振った。
本人がいたいなら止める義務はないが相当辛そうになったら部屋の奥にやろう。
僕は本棚に寄りかかり腕を組んだ。
「なんで君は父親を殺したいと?」
「あいつ、急にボケ始めたんだよ。それで今はもう身体もまともに動かない。母親もとっくに他界しててさ、頼れる親戚もいないから自由な時間がなくなっちまった」
かなり身勝手な願いだと思う。
でも、老人は足でまとい。
それは昔からある事だ。だから、姥捨山なんてものが存在する。
僕は同情をするように何回か頷き目に付いた本を取った。
「それじゃあ、この本を……」
「ダメっ!」
いつものように本を勧めようとすると、琥珀が声を荒らげて僕と青年の間に入る。
顔が真っ青なのは変わらないし、何かを伝えようにもそれ以上声が出ないのか口をパクパクさせるだけ。
だけど、琥珀は必死にそこにとどまっている。
琥珀……
僕は琥珀の行動を無下にしないよう本を元に戻した。
琥珀がそこまでするのなら仕方がない。久々にお節介でも焼きますか。
「あの、とても勝手なお願いなのですが1度君の家に連れてっては貰えませんか?」
「はぁ? なんでだよ」
明らかに不服そうな青年。
でも、一度言ったら通すまで引き下がらないのがこの僕。周りからは我が強いって言われるけど、褒め言葉として受け止めている。
「お願いします」
真剣な表情で先程の覚悟を持った青年のように一語一句ハッキリ告げると青年は目線を逸らし、またこちらに向けた。
「ーー嫌だ」
「なんで!? 普通そこは『いいよ』って言うところじゃないですか!?」
「なんでも感動的に事が進むと思うなよ」
青年は舌を出して中指を立ててくる。
なんて野蛮な……
僕は咄嗟に琥珀の目を両手で覆った。
中指を立てるなんて教育に悪い。
青年が訝しげな目で見てくるが気にせずにそのままいると再び青年が口を開いた。
「あいつは俺の恥だ。人に合わせたくねぇんだよ」
「恥……か……」
人間は自分の弱みを隠そうとする。
これは、人間の本能なのだろうか? でも、だからこそ人間の書く本は言葉では言い難い気持ちと抑えきれなくなった弱い部分がたくさん綴られていて面白い。強いて文句を言うならかなり美化されて綴られているのが気に食わないけど。
だけど、この人はまさにこの人自身の美化も何もされていない天然な本(弱み)を持っている。
リアルな物語を見れるチャンスなのに、この僕が易々と見逃すことができるだろうか? いや、できない。
僕はふっと不敵に笑うと青年はわかりやすく身構えた。
見せてくれないなら意地でも見せてもらう迄だ。
琥珀から手を離し青年の前にたちはだかる。
それから大きく息を吸うと光の速さで地面に手と頭をついて土下座した。
「ーーお願いします! 連れてってください!」
いつだかヒトからこうすれば大概の人間は断れないと聞いたことがある。そのため、僕はよく使ってる。これを目の当たりにした人達は決まって初めは引いたような表情をする。
チラッと少しだけ顔を上げると予想通り青年はドン引きの表情をら浮かべていた。
でも、僕は絶対屈しない! 連れてってもらうまでこうしてる!
それから青年は面倒くさそうに首の後ろをかくと口をもごもごさせてしゃがみ込んだ。
「わかった。連れてってやるよ。だから、顔上げろ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しさのあまり青年に抱きつくと頭から隕石のようなゲンコツが降ってきたためすぐさま離れた。
もう。そんなに強く殴られると蓄えた知識が無くなっちゃうじゃないか。
青年が話すまでに時間はかからなかった。
相当の覚悟を持ってきたのだろう一字一句ハッキリ聞き取りやすく告げてきた。
視界の端に入った琥珀が死人のように真っ青な顔をして小刻みに肩を震わせている。
琥珀にとってはかなりショッキングな言葉だったのだろうか。
「琥珀、部屋の奥に行ってていいよ?」
優しく促すも琥珀は無言で何度も首を横に振った。
本人がいたいなら止める義務はないが相当辛そうになったら部屋の奥にやろう。
僕は本棚に寄りかかり腕を組んだ。
「なんで君は父親を殺したいと?」
「あいつ、急にボケ始めたんだよ。それで今はもう身体もまともに動かない。母親もとっくに他界しててさ、頼れる親戚もいないから自由な時間がなくなっちまった」
かなり身勝手な願いだと思う。
でも、老人は足でまとい。
それは昔からある事だ。だから、姥捨山なんてものが存在する。
僕は同情をするように何回か頷き目に付いた本を取った。
「それじゃあ、この本を……」
「ダメっ!」
いつものように本を勧めようとすると、琥珀が声を荒らげて僕と青年の間に入る。
顔が真っ青なのは変わらないし、何かを伝えようにもそれ以上声が出ないのか口をパクパクさせるだけ。
だけど、琥珀は必死にそこにとどまっている。
琥珀……
僕は琥珀の行動を無下にしないよう本を元に戻した。
琥珀がそこまでするのなら仕方がない。久々にお節介でも焼きますか。
「あの、とても勝手なお願いなのですが1度君の家に連れてっては貰えませんか?」
「はぁ? なんでだよ」
明らかに不服そうな青年。
でも、一度言ったら通すまで引き下がらないのがこの僕。周りからは我が強いって言われるけど、褒め言葉として受け止めている。
「お願いします」
真剣な表情で先程の覚悟を持った青年のように一語一句ハッキリ告げると青年は目線を逸らし、またこちらに向けた。
「ーー嫌だ」
「なんで!? 普通そこは『いいよ』って言うところじゃないですか!?」
「なんでも感動的に事が進むと思うなよ」
青年は舌を出して中指を立ててくる。
なんて野蛮な……
僕は咄嗟に琥珀の目を両手で覆った。
中指を立てるなんて教育に悪い。
青年が訝しげな目で見てくるが気にせずにそのままいると再び青年が口を開いた。
「あいつは俺の恥だ。人に合わせたくねぇんだよ」
「恥……か……」
人間は自分の弱みを隠そうとする。
これは、人間の本能なのだろうか? でも、だからこそ人間の書く本は言葉では言い難い気持ちと抑えきれなくなった弱い部分がたくさん綴られていて面白い。強いて文句を言うならかなり美化されて綴られているのが気に食わないけど。
だけど、この人はまさにこの人自身の美化も何もされていない天然な本(弱み)を持っている。
リアルな物語を見れるチャンスなのに、この僕が易々と見逃すことができるだろうか? いや、できない。
僕はふっと不敵に笑うと青年はわかりやすく身構えた。
見せてくれないなら意地でも見せてもらう迄だ。
琥珀から手を離し青年の前にたちはだかる。
それから大きく息を吸うと光の速さで地面に手と頭をついて土下座した。
「ーーお願いします! 連れてってください!」
いつだかヒトからこうすれば大概の人間は断れないと聞いたことがある。そのため、僕はよく使ってる。これを目の当たりにした人達は決まって初めは引いたような表情をする。
チラッと少しだけ顔を上げると予想通り青年はドン引きの表情をら浮かべていた。
でも、僕は絶対屈しない! 連れてってもらうまでこうしてる!
それから青年は面倒くさそうに首の後ろをかくと口をもごもごさせてしゃがみ込んだ。
「わかった。連れてってやるよ。だから、顔上げろ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しさのあまり青年に抱きつくと頭から隕石のようなゲンコツが降ってきたためすぐさま離れた。
もう。そんなに強く殴られると蓄えた知識が無くなっちゃうじゃないか。