陽一たちが居るこの林は、陽一の家から自転車に乗って20分で着く。


陽一の中でのイメージでは、幽霊という単語を予想し、廃墟になった病院や建物だと思っていた。しかし、予想は見事に外れ、林に来るとは思ってもみなかった。


『後、もう少しよ』


メリーは冷静に答え、先を進める。陽一は、仕方なくメリーの後をついて行く。


ふと肩に掛けている竹刀袋を手で触る。


何故、陽一が竹刀袋を持っているのかというと、家を出る前に、メリーに“もしもの為に使える物を持ってきて”と言われ、竹刀を持っていくことにしたのだ。


こんな白昼に、悪霊に襲われたら面倒臭いなと、思いながら溜息をつく。


『ここよ』


「ッ!!おい!急に止まる…な…よ…」


突然、メリーが止まり、考え事をしていた陽一は止まれず、メリーの後頭部に鼻をぶつける。


メリーに怒ろうとするが、目の前の光景に驚愕し怒りが鎮まる。


一本の大きな楠が、翡翠の光の粒を放ちながら、怪しく光り輝く。


「なんだよこれ?!」


『G.S.Sの入口の為に造られた、霊結石でできた木よ』


メリーは、淡々と冷静に答える。