『安心して。貴方は自我を失ってただけだから、大丈夫よ。ねぇ、貴方は何を求めていたの?』


メリーの優しい問いかけに、女性の瞳から涙がこぼれ落ちる。女性は唇を震わせながら話し始めた。


『わ、私、親の言う通りに生きてきたの…。自分のやりたいこともさせてくれなくて、家を飛び出したの…。そしたら、車にひかれて…グス』


女性は、メリーに寄りかかり泣き崩れる。


『話してくれて、ありがとう。つらかったわね』


メリーは、女性を優しく受け止め、しっかりと抱きしめた。


『貴方は自由よ。ここにとどまらなくてもいいの。さぁ、行きなさい』


メリーがそう言うと、女性の体は半透明になり薄れ始めた。


『話を聞いてくれて、ありがとう。貴方も助けてくれてありがと』


女性は陽一たちに満足そうに微笑み、煙のようになった。


満月の光に導かれたかのように、煙は夜空に登っていく。


陽一は全てを見終え、夜空を眺め続ける。



「ヤベッ!古池のこと忘れてたッ!頼む、助けてくれッ!」


出来事が起こりすぎて、古池の存在を忘れていた陽一は慌てだす。


古池は、悪霊の攻撃を受け気絶をしている。あれだけ吹っ飛ばされたので、軽傷ではないはず。


『わかった』


メリーは承諾をし、陽一と共に古池の元に向かった。