「お前は、帰らないのか?」


陽一は、不思議そうに古池に尋ねた。


「まだ、練習したいので帰りません」


古池はそう言い、素振りを始める。古池の目標は、陽一を越えること。


この前の練習で受けたアドバイスを聞いて、少しでも近付きたくて自主練をしているのだ。


真面目に取り組む古池に、陽一は嬉しくなり、暖かい眼差しで微笑む。


「そうか。あんまり無理する---ッ?!」


だが突然、陽一は腕を抱え地面に座り込んだ。


「部長?!どうしたんですか?!気分が悪いんですか?!」


陽一の様子が可笑しいことに気付き、古池は慌てて駆け寄る。


なんだよ…。これは…!


陽一の体に悪寒が走り、腕には鳥肌が立つ。収まるか気配のない症状に困惑し続けた。


「待ってて下さい!今から救急車を呼びます!」


「だ、大丈夫だ。少し寒気がしただけ………」


陽一は、このままでは古池に迷惑をかけると思い、慌てて立ち上がる。古池の顔を見た途端、陽一は目を大きく見開き固まる。



古池の後ろに、女性が立っていた。いや正確には、陽一たちの頭上高く浮いていた。


長い黒髪のロングヘアーに真っ赤の服を着ている。が、赤い服にしてにあまりにも鮮明過ぎる色合い。目を凝らしてよく見ると、真っ赤の服ではなく、血で服が真っ赤に染まっていた。