「ほれ。直ったぞ」
竹刀の修理が終わり、武志は陽一に竹刀を渡した。陽一は受けとった直後、素振りをする。
「ありがとな。さすが、ジジィだ」
やはり、武志と陽一では竹刀を直す腕の差を痛感されるほど、竹刀から伝わってくる。たとえ、喋るマシンガンだとしても、竹刀に関しては頭が上がらないと改めて尊敬した。
「ほい。2万円な」
「待て待て待て!利子付けすぎだろ!」
尊敬していたつかの間、武志からの高額な請求に、怒り出す陽一。
「こっちだって、商売なんだ。これぐらい払ってもらわんと。で、この金で道場の修理費にする」
武志は、右手の手の平を陽一に見せながら請求し続けた。
「だからって、孫から金を巻き上げるなッ!それに、この前県大会で優勝したからタダでいいだろ?」
陽一は、修理代を県大会で優勝をした“ご褒美”にしてほしいと交渉を持ちかける。
孫からのお願いに「仕方ないな」と諦めの言葉を呟いた。その呟きが聞こえ、陽一は期待に胸を膨らませた。しかし、
「仕方ないな。じゃあ、特別に1万9731円に安くしてやる」
「安くねぇしッ!その金額を安いと思う、てめぇの金銭感覚がおかしいわッ!」
陽一は、武志の手の平を叩きながら文句を言う
。文句を言われた武志は、陽一が自分の思い描いた通りの反応をしてきたのが、可笑しくなり気づかれないように笑った。
武志の悪巧みした笑みから、陽一がからかわれている事が分かる。
真面目な陽一は、その陰謀に気づくことはできず、まんまと武志の手のひらで転がされ続けられるのだ。