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「いてて…。たく、思いっきりやりやがって」


帰り道、慶太は頭を押さえながら、陽一に文句を言う。


先ほどの試合で、慶太は見事に完敗。頭が痛いのは、陽一から容赦のない面を食らったのが原因だった。


「隙をつくったからだろ。これに懲りて、練習を真面目にすることだな」


陽一は、慶太の様子を心配することなく、むしろ自業自得だと冷たく話す。


「へいへい。俺がわるーございました!」


慶太は不機嫌そうに答え、陽一に気づかれないように睨み返した。


はぁ…。まぁ、いいや。


慶太は開き直った。いや、諦めたのだ。これ以上、陽一に言っても何も変わらないのが、目に見えているのが分かっているからだ。


そして、そんな事はもう頭の片隅に追いやり、新たな話題を持ち出す。


「なぁ、今からお前の家に寄っていいか?」


「いいけど、何しにだ?」


「決まってるだろ。お前の部屋のどこかに、隠されているエロ本を探しに--ごふッ?!」


慶太は、陽一に竹刀の入った竹刀袋で思いっきり横腹を叩かれた。


「~~てめぇ、仮にも大将がそんな竹刀の扱いをしていいのかよッ!」


慶太は手で横腹の痛みを抑えながら、陽一に涙の抗議をする。


「副将の乱れをただすのも俺の務めだ。いいに決まってるだろ」


「部長だから、なんでも権利が許されると思うなよ!部権乱用だぞッ!」


「それを言うなら、“職権乱用”だろ」


陽一は、慶太の言動に呆れる。