「悪霊から守るためにか?」


『そうよ。悪霊がそれらを手に入れてしまうと、強力な力を発揮してしまい、多くの人に甚大な被害をもたらす』


…もう漫画の世界だ。うん。絶対にそうだ。


ただでさえ、非現実的な体験をして耐えている上に、さらに追い打ちをかけられ、陽一は生まれて初めて現実逃避を行った。


『だけど、大丈夫よ。私が貴方を護る』


「いや大丈夫だ。自分の身は自分で護れる」


現実に戻った陽一は、メリーの申しをためらうことなく断る。


『何を言ってるの!貴方は、悪霊の恐ろしさを分かっていない!』


突然、メリーが声を張り上げ、陽一は少し驚いた。何故、そんなに張りつめているのか分からなかった。


「だけど、俺は今日、悪霊に襲われていない」


今日は霊としか遭遇していない。もし、メリーの言う通りなら陽一が学校や外に出た時に襲われていた。

呑気な考えをしている陽一に対して、メリーは表情を歪め始める。陽一は、特殊能力の事を甘く考えている事に気付いたのだ。


『それは、貴方が目覚めたばかりだから、まだ気づかれていないだけ!

それに、悪霊は夜に活動するの!貴方が寝ている時が1番危ないの!』


「なんだよ…。それじゃあ、俺は悪霊に怯えながら生きていかなといけないのかよッ?!」


人間ならまだしも、得体の知れない悪霊に脅える日々を過ごすなど、陽一には耐えられなかった。