下に降りていくと、リビングで陽一の父親が朝ごはんを食べていた。
陽一は、父親と向かい合わせになるよう反対側の席に座る。
「おはよう。今日は、朝練ないのか?」
「ない。休み」
陽一の父親とたわいのない会話をする。そして、二人して朝ごはんを黙々と食べた。静かな空間には、話し声はなく、唯一テレビから朝の情報番組の音声が聞こえてくる。
父親は物静かな性格の為、陽一も必要以上に話しかけたりしない。互いに静かな空間で過ごすのを好んでいるのだ。
「ごちそうさま」
陽一のお父さんは、席を立ち洗面所に向かった。陽一は、台所に行って、自分で朝ごはんのお代わりをする。
「行ってくる」
母親は、父親が玄関に行くのを見て、慌てて玄関に向かった。
「行ってらっしゃい」
陽一の父親は、先に家を出た。
陽一は朝ご飯を食べ終わり、洗面所で身支度をし歯磨きをする。
そう言えば、何か忘れているような……。
歯磨きをしながら、悩む陽一。
……まぁ、いっか。いつか思い出すだろ。
陽一は考えるのをやめて、かばんと竹刀袋を背負い玄関に向かう。リビングから、陽一を見送ろうと慌てて母親がやってきた。
「気をつけて行ってらっしゃい」
「行ってきます」
これが、織原家の“いつもの平凡な日常”
陽一は、その平凡が壊されていたのを気づかないまま、学校に向かった。