ダンーーーーー!
バシバシと竹刀がぶつかり合う音と、足を踏み込む音が道場の中で響き渡る。周りに居る者達は、緊迫した表情で見つめていた。
彼らの見つめる先には、1対1の真剣勝負をしている者が居る。1人は相手に隙を与えまいと攻め続け、1人は一本取られまいと必死に防御をする。
攻撃側の容赦ない責めに、防御側は攻撃に耐えるのに精一杯。しかし、防御側は徐々に体力を削られてしまい限界が近づく。
ドッ!
防御側が一瞬の隙を見せてしまい、攻撃側に面を一本を取られた。
「一本!織原 陽一(オリハラ ヨウイチ)の勝ち!」
審判のかけ声と同時に礼をして、陽一は面を取る。
「古池。攻撃の時は悪くなかったが、防御が甘い。それと、相手に隙を見せるな。分かったか?」
「はい!ありがとうございました!」
後輩の古池は、陽一に深く礼をして自分の場所に戻っていった。
「厳しすぎないか?部長さん」
そんな陽一に、先ほど審判をしていた短髪の少年が呑気に話しかける。
「先輩が言ってただろ。“情けは無用”だって」
陽一は防具を外して頭に巻いていたタオルを取り、新しいタオルで汗を拭きながら答えた。
「さすが、陽一。先輩と尾坂先生から、部長と大将を任されるわけだ」
先輩が引退をしてから、陽一がこの剣道部の部長を務めている。
そして、試合の時も大将を勤めるほどの実力があった。