心配するような瞳に捉われて、思わず笑ってしまう。気にかけてくれるのは有難い事だけれど、羽賀ちゃんのそれは少し、過保護な親を連想してしまう。いくつも年下の女の子に子供のように扱われるのだけは避けたい。


「全然。楽しかったよ。でも俺、多分あんまりこういう、大勢で騒ぐ感じに向いてないんだよな」

「そうなんですか?」

「うん。なんかこう…しっぽり飲みたいっつーか、」


紫煙を吐きながらそう言った俺に。彼女は何かを閃いたようにパァッと表情を明るくさせた。なんだか嫌な予感がした。羽賀ちゃんがこういう顔をする時は、だいたい突拍子もない事を言い出す気がする。


「じゃあ私と抜けましょう!」


どうやら予感は的中したらしい。

まだ火種がついている煙草を持っている手をがしりと掴まれて、「ちょ、おい」と焦る俺なんかお構いなしに、彼女の満面の笑みが視界に広がる。



「しっぽり飲める、とっておきのバーがあるんです!真島さんもきっと気に入りますよ!」


酒が入っているからか、いつにも増して強引さに磨きがかかっている気がする。煙草を灰皿に押し付けながら、もう酔っ払いの相手は御免だと思う俺の口は、なんとかこの場を切り抜けるべく、動きをみせた。