あれからさらに1時間ほどで一次会はお開きとなり、ぞろぞろと居酒屋を後にする社員たちに続いて、俺も外の世界へと身を投じた。
わいわいと騒ぐ集団をぼんやり見ていると、出入口から少し離れた場所にぽつりと置かれていたスタンド灰皿が目に留まる。それに誘《いざな》われるように此処に来て、ポケットから取り出した煙草に火をつけた時だった。
「羽賀ちゃん、おつかれ。楽しんでたな」
「確かに楽しかったんですけど、同僚の子の惚気話しがマシンガン並みに止まんなくって…おかげで真島さんと全然話せなかったんで、不完全燃焼です」
げんなりと肩を落としては俺の隣に並ぶように立った彼女に思わず笑みが零れ落ちる。
「でも、今話せてんじゃん」
「まあそうですけど~。真島さん、二次会行くんですか?」
不服そうにムッと尖らせていた唇がほどかれたと思った時には、そう問いかけられていた。「んー…」と唸るような声を出しながら、指に挟んだそれを口元に近づける。
なかなか返答しない俺に、羽賀ちゃんの不思議そうな眼差しが突き刺さる。
「もしかして結構酔ってます?」
「いや、そんな事ねえよ。むしろ飲み足りないくらい」
「じゃあ、あんまり楽しくなかったですか?」