田辺の視線を辿るように目を向けると、何度か目にした事のある女の子が目に入った。色白で小柄で、ぱっちりとした目が特徴的な子だと思う。
「へえ。ああいう子がタイプなんだな」
「真島さんはどういうのがタイプっすか?」
「んー、タイプとか気にしたことねえなあ」
「ええー?じゃあ、元奥さんは?」
ジョッキを口元に持っていこうとした手がぴたりと止まる。
「元奥さん、どんな人だったんすか?」
なんて事もないように聞かれた。
それもそうだ、もう5年も経っている。とっくに区切りをつけて前に進んでいると思うだろう。俺だって時間が解決してくれるものなんだと、そう信じてここまで来た。まさか数年が経った今でも懲りずに胸を苦しめているだなんて、信じたくもない事実だ。
ちいさな箱に仕舞われた、キラリと光るそれを、いつまでも捨てられなかった。この地を離れたあの時も、この地に戻ってきた今も、この身と共に連れていた。ほんとうに、未練がましいにもほどがあると思う。