「真島さーん」
鼓膜を突いた声にハッと我に返る。視線を向けた先、頬を赤く染めた田辺がへらりとした笑みを纏って、俺の肘を小突いてきた。
「なあにボーッとしてんすか。飲みましょう!」
「もう飲んでるって」
「ええ~?ペース遅いっすよ!ほら、もっと飲みましょう!」
ほらほら!とテーブルに置かれていたジョッキを勝手に持ち上げては顔の前にズイと押し付けられて、苦笑しつつもそれを受け取る。
「めちゃくちゃ酔ってんな」
「はいー?酔ってませんって!」
「酔ってる奴こそ そう言うんだよ」
こんなの序の口っすよ~と、へらへら笑う田辺に適当に相槌を打ってから、すっかり温《ぬる》くなってしまったビールを喉に流し込む。
どうやらこっちの会社では盆休暇前と忘年会は毎年欠かさずに、ほとんどの部署の社員が集まる大きな飲み会が開催されるらしい。
今年も例に漏れず、盆休暇を目前に控えたこの時期、華金と呼ばれる今日に、それが開催された。