しゅんと項垂れてしまった横顔に、またもや抱きしめたい衝動に駆られる。

寂しいだなんて、今在る環境に置き去りにされる俺の方が何倍も思っている。そんな子供じみた思考が止まらなくなって、堪らずに小さな手を握る自分の手に、力を籠めた。



『大学って、どんなところなんだろ』


ぽつりと呟かれたその声に返す言葉が見つからない。その場所に行ったことすらないのだから、当たり前といえば当たり前だ。



『さあ。でも、たくさん人居るんだろうな』

『高校より断然広いもんね』

『うん。そのぶん、出会いもいっぱいあるんじゃねえの』


新しい環境に目を回しながらも、きっと良い出会いにだって恵まれるはずだ。いつも笑顔を絶やさず、優しい心を持った彼女に、引き寄せられる人間は少ない。俺がその中のひとりだったからこそ、強くそう思う。


そんな生活の中で、いつしか俺という存在が古くなって、霞んでくる時がくるんだろうか。

頭を過ったその考えは、さすがに情けなさすぎて声には出せなかった。


『私たち、いつまで一緒にいられるのかな』


珍しくセンチメンタルになっている彼女が、ちいさな声でそう紡いだ。まるでそれが伝染してしまったかのように、胸の奥が切なく締め付けられた。










――俺はあの言葉に、一体なんて返したんだっけ。