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「太陽、もう寝たの?」
リビングに戻ると、きょとんとした表情の菜穂が俺を振り返った。「寝た」と単調にそう答えれば「ありがとう」とやわらかい笑みを向けてから、前へ向き直る。
「もっと時間かかるかと思ったのに」
「案外すぐに寝た」
「さすがだね」
ふふ、と小さく笑う声が聞こえて、胸が苦しくなった。食器を洗う手を止めないまま「何か飲む?」と聞かれた。
「…いや、いい。もう帰るし」
「そっか。あ、見送るからちょっと待ってね。もう終わるから」
自然な会話を交わしながら、俺は突っ立ったまま菜穂の背中を見つめていた。
言葉の通り、すぐに洗い物を終えたらしい菜穂は、掛けられたタオルで濡れた手を拭く。
「お前、殴られてんの?」
その背中に、そんな言葉をぶつけた。