すっかり夜に差し掛かる時間を迎え、お風呂に促された太陽に“一緒に入ろう”とせがまれて、さすがに参ってしまった。

結局“寝るまで一緒にいる”という約束を交わした事でようやく納得してくれた。


2人がシャワールームに消えた後、シンと静まったリビングで何をするでもなく、ソファに浅く腰掛けながら、今に至る。


ふと、さっきの太陽の声が脳内で反響した。





『やくそくしたのに!!うそつき!!』




悲痛な叫びは心に深く刺さったまま、なかなか消えてはくれない。

俺もそんな風にひどく責め立てられたなら、少しは楽になれたんだろうか。そんな事を思ってしまう。



いつまでも共に過ごそうと手を取り合った。同じ景色を見つめようと笑い合った。結局実現できずに、別の道を辿っている。胸に残った遣る瀬無さは、どうしたって消えはしない。


果たせなかった約束がそこらじゅうに蔓延《はびこ》ったまま、それでも戻る事を許されない心はひたすら前に進むしかないのだと、何度も実感させられる。


今だけ、今日だけだ。


今日だけ立ち止まって、自分にとって痛いだけの現実を見つめようと決めた。

そうすれば俺も菜穂のように、過去を清算できる気がしたから。