1時間ほどで帰ろうと思っていたものの、あれよこれよと目移りする太陽との遊びに付き合っているうちに、すっかり夕暮れ時を迎えていた。
「ご飯、食べていく?」と訊ねられたそれに、首は自然と縦に動いていた。
こんな時間をいくら更新しても虚しさが募るだけだ。そう分かっているのに、もう少しここに留まっておきたいと思う自分がいた。
丸いローテーブルは3人で囲えばぎゅうぎゅうになった。その窮屈さが、逆に心地いいと感じてしまうくらいには、俺はこの空間に漂うものに酔っていたんだと思う。
「ぼく、ハンバーグだいすき!」
キラキラの笑顔を振り撒きながら、小さな口いっぱいにハンバーグを頬張る。その姿に思わず笑みを零しながらも、擦り切れた記憶が脳内に蘇る。
菜穂の手料理の中で、俺もこれが一番好きだった。いつまで経っても子供舌な俺に菜穂は笑いつつも、しょっちゅうこの、中にチーズがたっぷりと入ったハンバーグを振る舞ってくれていた。
懐かしい味を、記憶と共に咀嚼して呑み込む。
そんな俺の向かいで、菜穂はべたべたになった太陽の口の周りをティッシュで拭う。
本当に、家族のような時間だった。