「真島くんは?」
「俺は、右」
「そっか。じゃあ…ここで」
その言葉にこくりと頷く。同じように「じゃあ」と別れの言葉を返して、進むべき方向に向かうべく、踵を返した。刹那、踏み出そうとした足に重いものがずしりと纏わりつく感覚がして、思わずよろめきそうになった。
「やだ!!なんで!!!」
驚いて振り向いた先、太陽が俺の足にしがみついて悲痛な表情で叫びを上げていた。
「いっしょにおうちかえるっていった!!!」
「え?」
思わず間抜けな声がぽろりと零れ落ちた。ぱちくりと瞬かせる俺の目に、太陽の泣きそうな瞳がぶつかる。
「なんで!!まだおうちじゃない!」
「太陽、そういう意味じゃなくてね、途中まで一緒に帰ろうってことだったんだよ」
小さな背中を擦りながら菜穂が宥めるようにそう説明するけれど、こんな小さな子供にその意味がはっきりと理解できるわけもない。俺から引き剥がそうとすればするほど、いやだと声を上げ、ぶんぶんと首を横に振った。