勘違いして、ごめんね。

喧騒に交じって、そんな声が聞こえた気がしたけれど聞こえなかった振りをした。

そうしてやり過ごしていると、電話を終えた羽賀ちゃんが相も変わらず忙《せわ》しない様子で戻ってきた。



「またまたお待たせしてすみません~!」

「それはいいけど、電話は?大丈夫だった?」

「それがですね…電話、母親からだったんですけど、なんか凜の体調が良くないっぽくて…」


申し訳なさそうに眉を下げたまま、羽賀ちゃんは目の前で両手を合わせた。


「ほんっと申し訳ないんですけど、ここでお暇《いとま》させてもらっていいですか?」


何もそんな顔をしなくていいのに、と思った。むしろ早く帰ってあげてほしいとすら思う。思った通りのままにそう言えば、羽賀ちゃんは浅く頭を下げた。


「ほんとごめんなさい。私から誘ったのに」

「理由が理由だし、仕方ないって。俺の事は気にしなくていいから」

「うう~…ありがとうございます」



なんとも言えない表情で見つめられて、思わず笑ってしまう。