太陽が「お腹すいた」と、ぼやいたのは一通り遊び尽くした後だった。そして肩に引っ提げている、初めて会った時にも見た手作りのバックの中から徐に個包装のラムネを取り出した。


広場内に設けられているベンチに腰を落ち着かせて、隣でラムネを口に運ぶ太陽を見つめる。ぷっくりと膨らんだ頬が嬉しそうに持ち上がっていて、自分の頬も自然と緩むのを感じた。


太陽の小さな鼻の横、ぽつりと浮かぶ黒子《ほくろ》に目が留まる。

そこに触れようと手を伸ばしかけた、その時だった。



「遅くなってすみません!」


耳に馴染んだ声が鼓膜を突いて顔を上げれば、大きなショップ袋を提げた羽賀ちゃんがパタパタと此方に駆けよってくる姿を捉えた。その少し後ろに、菜穂の姿も確認する。


「ゆっくり買い物できた?」

「はい!もう!めちゃくちゃ買いました!」


腰を上げながらそう問いかけた俺に、羽賀ちゃんはにっこりとした笑顔を見せる。

その隣で「ごめんね、ありがとう」と少し申し訳なさそうにそう言った菜穂に「どういたしまして」と声を返した。