「あ、こら!太陽!」


息子が暴れ出した事に気づいた菜穂が咄嗟に声を上げながら此方に駆け寄ってくる。「ダメでしょ」と言いながら細い腕を引く、目の前に広がるその光景をぼんやりと見つめた。


「ほら、お買い物しに行こう?」

「やだ!あれほしい!あそびたい!」

「後でもらいに行こう?ね?」

「やあだ!!」


小さな身体にめいっぱい力を入れて、なんとかそこに踏み留まろうとしているのが見て取れる。力づくで引っ張るわけにもいかず、困ったように溜め息を吐いた菜穂を見遣りつつ、同じくらいの高さにある小さな顔をもう一度見つめた。




「俺と一緒に行くか?」


くりくりした瞳と視線が合わさった瞬間、口が勝手に動いていた。「え?」と素っ頓狂な菜穂の声の後に、パァっと笑顔を浮かべた太陽は、俺に手を伸ばす。



「いく!!あそぶ!!」


無条件に差し出された小さな手に、自然と俺の手も動いていた。小さすぎるその手は、羽賀ちゃんの手を握る時よりもどれだけの力を込めればいいか分からなかった。

壊さないように、大事に包み込む。