「あ、あそこ行ったことあります?」


歩を進めながらそう問いかけてきた羽賀ちゃんは少し歩いた先に聳え立つ駅ビルを指差していた。


「学生ん時は行ったけど…新しくなってからはないな」

「そうなんですか?1年前にリニューアルオープンしたんですけど、結構いろんなお店入ってますよ!せっかくだし、行きましょう!」


そう言いながらこれまたナチュラルに俺の腕に自分の手を絡ませる。その指先を無言で見下ろした。

…若さ故の行動力なんだろうか。きっとそう零したら“なにおじさん臭いこと言ってるんですか”と笑われるのがオチだろうから言わないけど、実際に7つも年が離れているとなれば、その差を感じてしまうのも無理はない。


「真島さん、今欲しいものあります?」

「んー……強いて言うなら、掃除機」

「掃除機ですか?」


くすくす笑いながら、此方を見上げるぱっちりとした瞳と視線が交差する。