羽賀ちゃんに手を引かれるまま辿り着いたのは宣言通り、イタリアン料理の店だった。
つい半年ほど前に新しくできた店らしく、向かいに座る羽賀ちゃんは「ずっと来てみたかったんです」と嬉しそうに笑った。
パスタとピザを頼み、それぞれをシェアしながら、いろんな話しをした。と言っても主に話し手に回っていたのは羽賀ちゃんだったけれど。
娘のことから始まり、学生時代から親しい友人のことや、田辺とのくだらない会話のこと。身振り手振りを加えて熱弁されるそれらに俺は相槌を打ちながら、時には噴き出すように笑った。
食事を終えてからも会話に花を咲かせ、途中「甘いもの頼んでもいいですか?」と小さな子供のようにおねだりしてきた羽賀ちゃんに「どーぞ」と笑顔で了承した。
羽賀ちゃんが頼んだジェラートを食べ終える頃には昼時を疾《と》うに過ぎていた。
「あ~、お腹いっぱい!ご馳走様でした!」
店を出た後、相も変わらず元気いっぱいの声でそう言いながらぺこりと頭を下げる羽賀ちゃんに「どういたしまして」と言葉を返しながら、自然と頬が持ち上がった。
休日にこうして誰かと過ごす事も、誰かと笑い合いながら食事を共にする事も、もう随分と久しい事だった。久しぶりに感じるその感覚は、やっぱりいいものだと実感する。