へへっと笑う羽賀ちゃんに「へえ」と相槌を打ちながらも、まさか2人きりだとは微塵も思ってなかっただけに静かに驚く。
小さい時、母親が買い物をしている間は俺が妹のお守りをしていたから、てっきり今日もそういう役割を兼ねての出かけるという意味だと思い込んでいた。
「さあ、行きましょ!」
何も考えていないような無邪気な笑顔を向けられてつられるように頬を持ち上げれば、伸びてきた細い指先が俺のそれにごく自然に絡まった。
その細い腕の一体どこにそんな力があるだと思ってしまうくらい力強く引かれて、意思とは関係なく歩を進める。
絡んだ指先に微かにきゅっと力が込められる。一方で俺は、その小さな手をどのくらいの力で握り返せばいいのか分からなかった。
たかが手を繋ぐくらいで、狼狽《うろた》えそうになる心に嘲笑する。