休日の駅前は人で賑わっていた。都心のそれとは比べ物にならないが、俺が住んでいた頃よりかは明らかに賑わいを見せている。
閑散としていた雰囲気は消え去り、派手に装飾されたビルや看板が視界の隅にチラつく。行き交う人々を横目で見遣りつつ、時間を確認しようと腕時計に視線を落とした、その時だった。
「真島さん!」
俺を呼ぶ声が鼓膜を揺らし、落としたばかりの視線を上げた。想像通りの人物が此方に駆けよって来るのが見えて、俺もその方向に歩みを進める。
「すみません~、ちょっと遅れましたあ」
「いや、俺もさっき着いたし」
乱れた髪を手櫛で整えながら申し訳なさそうに眉を下げる羽賀ちゃんは、いつものブラウスとスカートという格好ではなく、淡いオレンジのオールインワンに身を包んでいた。
初めて見る休日感溢れる姿に新鮮さを感じながらも、その傍に小さな存在がいない事に気づいて、再び口を開く。
「凛ちゃんは?」
「凛は母親に見てもらってます!なんかひまわり畑に連れていってもらうらしくて、めちゃくちゃご機嫌でしたよ~」