「今どのくらい?」
「4ヶ月です。まだ性別わかんないんらしいんすけど、ひとり目が女の子だっんで、男の子欲しいなーって」
まあ元気に生まれてくれたらどっちでもいいんですけどね、と続けた田辺の声をぼんやりと耳に受け止めながら、脳裏を過った残像に、思わず足を止めそうになる。
「…って、真島さん、聞いてます?」
呼びかけられた声に意識が現実に戻ってくる。
知らない間に歩くスピードが落ちていたらしい。俺を追い越して少し先で足を止めている田辺が眉間に皺を寄せて此方を振り返った。
「…聞いてる」
「嘘でしょ」
「嘘じゃねーよ。ちょっと、物思いに耽ってた」
「物思い?どんな?」
すぐに隣に並んだ俺をきょとんとした目で見上げてくる。そんな田辺をちらりと横目で見遣りながら、口を開いた。
「俺もそういうこと話してた時期あったなーって」
「え、真島さん子持ちなんすか?!」
「いや、いねえよ」
相も変わらずオーバーリアクションを取る田辺に苦笑しながらも、すぐに否定を口にした。