「仲、良いんだね」


ほろ苦いそれがごくりと喉を通ったタイミングで、ぽつりと呟かれた声。その言葉の意味が分からずに視線を向ければ、菜穂は俺の目をじっと見つめ返した。胸が、焦げそうになる。


逸らせない瞳の隅に、小ぶりな唇が動くのが映った。



「小夏ちゃんと、仲良いんだね」

「…まあ」


何を見て菜穂がそう思ったのかは分からないけど、事実、仲が悪いわけではない。肯定と取れる言葉を零した俺は、再び手元の缶を見遣る。



「――なあ」


なんの変哲もないそれを見つめながら、無意識に口が動いていた。ワンテンポ遅れて「ん?」という声が返ってくる。その声を辿るように隣に視線を向けた。





「今、幸せ?」



当たり前のように絡まった視線をそのままに、聞きたくて仕方なかった言葉を紡いだ。