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「――飲む?」
手洗い場で手を洗ってから再びバーベキュー場の方に戻ったところで、そんな声が掛けられた。振り向くとそこには缶ビールを差し出す菜穂がいた。
その後方に子供たちがシャボン玉を飛ばして笑い合っている光景が広がっている。ちらりとそれを見た後に、ちいさくお礼を言いながら菜穂の手から缶ビールを受け取った。
ひやりとした感覚が皮膚を伝う。
手の中にあるそれは、俺がいつも飲んでいたメーカーの物だ。たったそれだけの事。深い意味はない。
俺があの11桁の番号を覚えているように、菜穂の中でもまだ息を吹いている俺の一部がある。感情とは関係なく、一種の刷り込みのようなそれは、今となってはもうなんの意味も成さない。
割り切るように、缶の蓋を開けた。