「俺、そういうのに偏見ないんだよな」


その瞳を見据えながら、遠い記憶を呼び起こすように言葉を紡ぐ。



「そもそも俺が父親と血繋がってないし」

「…そうなんですか?」

「うん。俺が10歳の時に母親が再婚して、その後に妹が生まれたから、妹とも半分しか血繋がってねえの」



こうして言葉にすると多少複雑に捉えられそうだが、俺自身、自分の家庭環境に関してそう思った事は一度もない。

胸を張ってそう言い切れるのは、あの時、母親の再婚相手として姿を現したあの男《ひと》が、どんな時も俺と真向から向き合ってくれたからだと思う。


“家族”という関係を築き上げようともせずにまるでゴミのように俺と母親を捨てた男なんかより、俺は今の父親を心の底から尊敬してる。




「俺も再婚するまでは母子家庭だったし、女手一つで子供を育てるのがどんだけ大変かってこと、少しは分かる」



本来なら2人で担うべき役割を全て1人で担うだなんて、並大抵の事ではない。きっと“大変”だなんて言葉では追い付かないほど、苦労と苦悩の連続だろう。