俺がその言葉に声を返すよりも先に、羽賀ちゃんは娘をがばっと後ろから抱きしめながら言葉を続けた。



「もれなく、こーんなに可愛いお姫様もついてきますよ!」


キャッキャッと笑う凛ちゃん、それからにんまりと笑う羽賀ちゃんを交互に見る。おんなじ笑顔を浮かべる2人に、自然と頬が持ち上がった。




「それは、最高だな」


呟くようにそう言ってからゆっくりと手を伸ばし、凛ちゃんの頬に付いていた泥を指で拭う。その頬の柔らかさに静かに驚きつつもチラリと羽賀ちゃんを見遣ると、彼女はぽかんと口を開けたまま静止していた。


その表情に首を傾げながら「どうした?」と問いかければ、羽賀ちゃんは少し困ったように笑いながら開口した。



「…いや、バツイチ子持ちっていうと大抵引かれちゃうんで」

「…」

「てっきり真島さんもそう思ってるのかなあと」


へへ、と笑いながらポリポリと頬を掻く羽賀ちゃんから、娘の凛ちゃんに視線を移す。

どこまでも澄んだ瞳が真っ直ぐに突き刺さった。