「おにいちゃんも、しよ!」
「お。“おにいちゃん”て呼んでくれんの?」
「何言ってるんですかあ!当たり前ですよ!言っておきますけど真島さん、私と同い年って言っても通用しますからね?」
「さすがにそれはねえだろ」
思わず噴き出す俺に羽賀ちゃんは「いやいやあります!ありますって!」と何故か頑なに折れようとしない。そんな俺の手に、泥で汚れた小さな手が重なった。
「おにいちゃん、まあるいのつくって!」
「まあるいのな、了解」
言い方を真似ながら、泥を手で掬っていく。その様子を見ていた羽賀ちゃんが「やば!カメラ!」と慌ただしく立ち上がった。
「また撮んの?」
「当たり前です!あ、どこにも載せないんで安心してくださいね!すべて家宝にします!」
「家宝って。んな大したもんじゃないだろ」
小さなショルダーバックからウェットティッシュを取り出した羽賀ちゃんは泥で汚れた手を綺麗に拭いてから、いつものようにスマホを構えた。