そうこうしているうちに大勢でのバーベキューが始まりを告げる。
主に男性陣が具材を焼いていくなかで、手が空いているもの同士では談笑を楽しんでいた。
俺もそこそこに周りと話しを交わしながらも、少し後ろに居る菜穂の気配ばかりを気にしてしまう。
どうやら今はママ友たちと話しをしているらしい。聞き耳を立てるつもりは全くないが、距離が近いからか否応なしにその声が耳に入ってくる。
「菜穂ちゃんがこういう所来るの珍しいよね?」
「んー、まあ、そうかな?」
「そうだよー、去年も来なかったじゃん?ていうかてっきり旦那さん連れてくるのかと思ってた!」
そうか、そうだよな。
そういう展開になっていてもおかしくなかった。実際に旦那を連れてきている人も何人か居たのを思い出しては、そうならなかった事実に心底胸を撫で下ろした。
今の旦那?無理だろ、絶対会いたくねえ。
「あの人…忙しいから。それにこういう所、来たがらないの」
あー無理。まじで無理。
聞きたくねえ。
持っていた缶ビールを木製のテーブルの上に適当に置いて、その場から離れる。
遠くの方で「最近旦那さんとどうなの?」と菜穂に問いかけているであろう声が微かに聞こえて、その返答が耳に届かないように歩くスピードを上げた。