そんな事が行われていたなんて知らなかった。まあ、ここに戻ってきてまだ2ケ月も経ってないから、知らなくても当然だろうけど。
「ちなみにうちの会社の人もちらほら来るので、浮く心配もありません!」
「浮くって」
思わず、はは、と笑みを零す。こんな年下の女の子に気を遣わせてしまって申し訳ないと思う反面、その気遣いが素直に有難いとも思う。
「どうです?夏らしいこと、しません?」
夏らしいこと、か。言われてみればもう随分とそういう類のものを楽しんでいない気がする。転勤先では毎日激務に追われていて、仕事を片付けるのに必死だった。それでいいと思っていたけれど、そうやって全てから目を逸らし諦めて生きていく人生は、驚くほどに味気がなかった。
俺ももうそろそろ、自ら動くべきなのかもしれない。
「新しい出会い、あるかもしれませんよ」
にんまりとした羽賀ちゃんの笑みに倣うように口角を上げた俺は「いいな、それ」と、その誘いに乗ることにした。