「ね、田辺くん見て見て!めちゃくちゃイイ感じに撮れてるでしょ?」

「ん?ああ、また真島さんフォト?好きだねー、羽賀ちゃん」

「目の保養だも~ん」

「ほんとにそれだけ?」

「んん~、下心がないとは言い切れないけど、真島さんガード硬いからねえ」


にやりと不敵な笑みを浮かべた羽賀ちゃんが横目で俺を見遣る。こういう時にどういう反応を取るのが正解なのか分からず、いつも曖昧に頬を持ち上げては惚けるように首を傾げてしまう。

羽賀ちゃんの言葉は基本的に、どこからが冗談でどこまでが本気なのかが掴めない。それ故、いつも振り回されている気がする。



「まあでも、元気になったみたいで良かったっす」


ふいに落ちてきた言葉に、再び煙草を取り出そうとしていた手が止まる。視線を向けると、声の主である田辺は持ってきていたコーヒーの缶を傾けながら声を繋げた。


「一週間前くらいでしたっけ?真島さん、外回りから帰ってきたと思ったら目ぇ真っ赤に腫らしてて、まじで何事かと思いましたもん」

「ええ、なにそれ見たかった!もしや真島さん、失恋ですか?」