「あ、羽賀ちゃんも居たんだ?」
そう言いながら中に此方に歩み寄ってきたのは、田辺だった。手にしていたケースから煙草を取り出し、それを口に咥えた田辺に「1本ちょーだい」と強請《ねだ》る羽賀ちゃん。
「毎回吸うなら買えばいいのに」
「ダメダメ!もう煙草はやめたの!」
「いや、辞めれてないじゃん」
笑い混じりにそう言う田辺につられて俺も笑う。そんな俺たちの間で田辺から貰った煙草にさっそく火をつける羽賀ちゃんは「これはセーフ!」と、随分と都合のいい事を言う。
羽賀ちゃんは元々は喫煙者だったらしいが、妊娠を機に辞めたらしい。辞めたといっても、こうしてここに顔を出す度に田辺に強請っているから、辞めたと言い切っていいのか否か。本人曰く、“貰うのはセーフ”らしい。
羽賀ちゃんのその定義は未だによく分からないけど、ここでこうして3人で駄弁る時間が案外気に入っていたりするから、まあ、なんでもいいかという結論に至る。