頭の隅でどうでもいい思考を巡らせながら、此方に向けられた画面を注視する。そこには予想通り、煙草を吹かしている俺の姿が映っていた。

俯き気味になっているせいか、長めの前髪が顔をほとんど隠し、煙草を挟んでいる手で口元は覆われている。


さっき撮られた事を知っているからこれが“俺”だと断言できるけれど、それを知らなかったら誰なのか分からないだろう。



「顔写ってねえじゃん」

「え、写していいんですか!?」

「ばか、だめだって」


再び此方に向けられたスマホに賺《すか》さず手をかざしながら思わず苦笑にも似た笑みを零せば、羽賀ちゃんは何故かスマホを握っていない方の手で目元を覆った。


「あーん、なんですか、その笑顔!我儘な彼女を宥める時に使うやつですよ、それ~!」

「なんだそれ」


本気でなんだそれすぎて笑える。小さく笑い声を零しながら短くなった煙草を灰皿に擦りつけていると、喫煙所のドアがガチャリと開いた。