菜穂と再会してから、早くも一週間以上が経とうとしていた。あの日ばかりは落ち込んだなんてもんじゃなく、本当に屍も同然のように参っていたけれど、日が経つにつれて徐々に平静を取り戻しつつあった。
…てか、離婚して5年と少ししか経ってないのに、あの子供は4歳っつってたよな。
「秒速かよ」
思わずそんな呟きがぽつりと口から零れて、苦さが滲んだ笑みをひとつ落とす。
俺が思っている以上に時は流れている。きっと目にも止まらぬ速さで、一向に流れ続けている。
置いて行かれている、なんて悲観に浸るのは筋違いだ。今まで動こうともしていなかった俺が、その流れについていけるはずがない。
全てが、自業自得だ。
「や~ん!!今日も相変わらず色男ですね、真島さん!!」
パシャリ、そんな音と共に陽気に溢れたような声が辺りに響く。ふぅ、と紫煙を吐き出しながら声の主の方向に顔を向けた。こっちにスマホを構えながら、にんまりとした笑みを浮かべているその子の名前は羽賀《はが》小夏《こなつ》。事務の社員だ。