数分後、目的地に辿り着いた俺は目の前の白いドアをガラッと開けた。

中を見渡すと、そこにお目当ての保健医の姿はなく、代わりに制服に身を包むひとりの女子生徒がいた。

俺を視界に入れたその女子生徒はパイプ椅子から腰を上げ、此方に駆け寄ってくる。


『どうしたの？頭痛い？』

『いや、ちょっと怪我して…』

『怪我？見せて？』


促されるままに患部を覆うように当てていた手を退ければ、俺を見つめる黒目がちな瞳がくわっと大きく見開かれた。


『えっ、血！血出てるよ！』


さっきの中川と同じようなリアクションを取られて、思わず笑ってしまった。目の前の女はそんな俺の腕をがしっと掴み、ぐいぐいと中に引っ張る。


『いやいや、笑い事じゃないからね！？ほら、ここ座って！』


さっき自分が座っていたパイプ椅子に俺を座らせ、目にかかるほどの俺の前髪を驚くほど優しい手つきで横に流した。




…手、綺麗だな。