『やばい!真島、まじでごめん!ちょ、誰かタオル持ってねえ?!』


取り乱しながら大声で何度も“誰か!”と繰り返す中川に、こっちまで焦ってくる。一体何事だと集まってきた野次たちの視線が痛い。



『いやほんと、大丈夫だって』

『でも、すげえ腫れてる、血も、どうしよう、まじで』


後から知った事だが、中川は血が大の苦手だったらしい。負傷した俺よりもげっそりとした表情を浮かべる中川に思わず苦笑する。



『とりあえず保健室行ってくる』

『じゃ、じゃあ俺も!』

『お前まだ準備残ってんだろ、そっち優先しろって』

『でも、』

『いーから。ほら』


納得いっていなさそうな中川をなんとか躱《かわ》して、立ち上がる。と、途端に目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。思わず眉を寄せながらもフラつきそうな足に力を入れる。


一歩一歩、足を踏み出すと共に頭がズキンと痛む。思ったよりも深く打ち付けてしまったのか。恐る恐る患部を指で撫でてみれば、中川が言っていた通り少し腫れている。そして、出血もしてる。


トイレにでも寄ってどうなっているのか鏡で確認しようとも思ったけど、やめた。傷を見たら余計に痛みが増しそうだと思ったからだ。