『――真島、危ない!』
誰かの切羽詰まったような声が耳に届いた刹那、ゴンッという鈍い音が響き渡ると共にこめかみ辺りに物凄い衝撃が走った。
受けた衝撃をそのままに身体が床に倒れ込む。咄嗟に突いた手で体勢を整えようとする俺に『おい!』『大丈夫か!』と、さまざまな言葉が投げかけられる。
薄ぼんやりと開けた瞳に、体育祭に使う予定だったプラカードが転がるように落ちているのが映った。
どうやらこれがこめかみに直撃したらしい。普通に痛え。
『悪い!俺、全然周り見てなくて…っ』
プラカードを運んでいたであろう人物――同じクラスの中川《なかがわ》が泣きそうな声で謝ってくるのをガンガンする頭で聞く。
『いや、俺も前見てなかったし』
『っちょ、やべえ!血!血出てる!』
こめかみを押さえていた手を外し、痛みに耐えながらも言葉を放つ俺の声を遮った中川はギョッと目を見張った。
え?と思いながら自分の手の平に視線を落とすと、中川の言葉に違わず、そこには少量ではあるが確かに鮮血が付着していた。