とにかく早く、外に出たかった。


すれ違う人に何度もぶつかりそうになりながらも、ひたすらに出口に向かった。大丈夫だ、まだ歩ける。“ここを出る”という意思だけを抱えて、何度も躓きそうになる足を必死に動かした。

店を出れば、当たり前のように灼熱の世界が待っていた。

網膜を突き刺すような日差しに目の前が眩む。頭上から照り付けるその光は、空に浮かぶ太陽が発しているものだ。そう、太陽の――…






『男の子ができたら、あっくんの名前の字、使いたいね』


『ぼくの名前ね、おかあさんがだいすきな字がはいってるんだって』


『太陽の“陽”って書いて、あきらっつーの』


『太陽です！もうすぐ、４さいです！』





――…ああ、もう、無理だ。


独白のような呟きが心の中で零れ落ちた。胸が詰まるような苦しさをそのままに、その場に力なくしゃがみ込む。咄嗟に目元を覆った手の平が、瞬く間に濡れていくのを感じた。





「なんで、俺の字、使ってんだよ…」


馬鹿みたいに震えた声だった。止め処なく溢れてくる雫と共に嗚咽が零れそうになって、軋むほどに奥歯を噛み締めた。