世界はいつだって目まぐるしく変わっていく。
聳え立つ高層マンション。跡形もなくなった母校。流行りのアイスクリーム店。都心で有名なラーメン屋。大きなショッピングモール。
存在しなかったはずのものが目の前に立ちはだかり、まざまざと知らせてくる。
俺だけがまだ、何も変われていないんだと。
「あっくん」
俺だけがまだ、その響きの中で、彷徨い続けているんだと。
「…ごめんね」
何に対しての謝罪なのか。
「…ありがとう」
何に対して詫びられているのか。
“私だけ幸せになってごめんね”?
“私から離れてくれてありがとう”?
そんな被害妄想じみた思考が延々と頭の中を巡って、いよいよ吐き気すら催してくる。
もう一度後ろへと下がった足は、覚束ないままに踵を返した。俺は最後に一言「じゃあ」と、添えたんだろうか。それすらもよく、分からない。