「太陽」


コンコンとドアをノックする音が聞こえて、手を止める。「うん?」と返事をすれば、ガチャリとドアが開いた。その先に居たお父さんは机に向き合うぼくのそばまで来て、開いているドリルに目を通す。


「宿題できたか?」

「んーもうちょっと」


小学生は、たくさん宿題があることを知った。とくに夏休みの今は、何から手をつけたらいいのか分からないくらいに宿題の山積みだ。

楽しいことばかりじゃないけれど、学校に行くのは楽しい。友達もたくさんできて、毎日がキラキラ輝いているみたいだ。こういうことを“じゅうじつ”っていうらしい。この前、お父さんが教えてくれた。


「ちょっと休憩するか?」

「うん!」


元気よく頷いたぼくの頭をお父さんは笑顔を浮かべながら優しく撫でてくれる。その笑顔もその手も、ぼくは大好きだ。

椅子から立ち上がろうとしたところで、少し腰を屈めたお父さんがぼくの身体をひょいっと持ち上げた。その広い肩にきゅっとしがみ付きながらも、今度はぼくが見下ろす形でお父さんを見る。


「ぼく、ひとりで階段下りれるよ」

「まあいいじゃん。いつまで抱っこさせてくれるか分かんねえし」

「ふふ、なにそれ。いつでも抱っこしていいよ?」

「じゃあ今する」


ふにふにと頬っぺたを抓まれて、もっと笑ってしまう。

お父さんはぼくに“甘い”らしい。お母さんがいつも言っている。こうして構ってくれることが“甘い”ということなら、ぼくはずっと甘いお父さんでいてほしいと思う。