バタン、とドアが閉まる音を遠くで聞いた。



「んっ…」


何度も何度も角度を変えて降ってくる口付けに、身体の芯が熱くなる。必死に伸ばした腕をその首に巻き付けて、しがみ付くようにぎゅっと抱き着いた。

離れていた時間を埋めるように、何度も唇を合わせた。無我夢中だった。もうそれしか知らないみたいに、何度も繰り返した。


馬鹿みたいに何度も繰り返したのに、それでも足りない。もうとっくに呼吸は続かなくなってきているのに、それでも休ませてほしいとは思わなかった。酸素よりも、この人の熱が欲しい。もっと、と求める心が張り裂けそうだった。

少し離れていく唇を追うように顔を寄せれば、浅く重なった唇がふっと笑ったのが分かった。



「は、ぅ」

「息、苦しいだろ」

「あっ、くん…」

「うん」


両頬が大きな手に包まれる。頬や瞼に落ちてくる優しいキスに酔いしれてしまいそうだった。そのどれもが与えられて当たり前のものじゃない。

それが痛いほど分かった今、余すことなくその感触を刻み付けてほしいと願った。