灼熱の日差しが燦々《さんさん》と世界を照り付けていた、真夏を象徴するかのような、その日。


約16時間の陣痛を乗り越え、その子は大きな産声を上げた。時刻は11時42分。『おめでとうございます、元気な男の子ですよ』と、そんな言葉と共に腕に預けられた存在に、とても言葉では表せない感情が込み上げてきた。


しわくちゃの顔、ぺちゃんこの鼻、きゅっと握られた小さな手。見つめれば見つめるほどに、感情が涙と化して溢れ出てくる。



その子の重みと体温を肌で感じて、ようやく、気づいた。

私はただ“母親”になりたかったんじゃない。この光景を、この奇跡を、あの人と見てみたかった。あの人と、この時を迎えたかった。

求めていた事は、ただ、それだけだった。







窓を隔てた先で忙しなく蝉の声が響いている。その中で、空に浮かぶたったひとつの光が暑いほどに世界を照らしていた。

止め処なく溢れる涙が、止まらない。

嗚咽に邪魔されながらも、震える唇で必死に言葉を紡いだ。



「…名前。私が決めても、いいですか」



泣き崩れるようにその子をいっそう強く抱いた。潰してしまいそうになるほどに小さくて、胸を焦がすほどにあたたかいこの子に、どうか、あの人の一部が在ってほしいと願った。










『太陽の“陽”』

『…それで、“あきら”って読むの?』










あっくん、