看護師の言葉も医者の声も、全てがただの雑音となった世界で、縋るように手にしたスマホを操作した。連絡先の一番上に映し出される名前が、涙で見えなくなっていく。

子供みたいだからと、その愛称で呼ばれる事を恥ずかしがっていた、愛しい人の面影が瞬く間に胸の中に蘇ってくる。


消そうとした事なんて、一度もなかった。どうせ私には消せない。離れる事を決めたその時から、消えてほしくないという願いばかりを抱えていた。


彷徨う指先に、愛おしい名前を映し出す画面に、色のない雫がぽたぽたと落ちてくる。


もうきっと、呼ぶ事を許されないその愛称を、心の中で何度も呼んだ。









どうすればよかったのかなんて、きっと、私にも貴方にも、分からないよね。