それからというもの、私と彼の関係が変わる事はなかった。仕事の事で何か用があれば話す程度。とても一晩を共にしたとは思えないくらい、今までと何も変わらなかった。
彼は性欲を満たしたかっただけ。私はさびしさを埋めたかっただけ。お互いに、他意はなかった。
そんな中、私の中で起こっている変化に気づいたのは、その日から2か月ほどが経った頃だった。
「――っ!」
仕事中、いきなり襲ってきた激しい吐き気に、ガタッと大きな音を立てて席を立つ。そのまま飛び込むようにトイレに駆け込んだ。
聞くに耐えないような声を上げながら、便器にしがみ付く。綺麗な場所じゃない事は分かっていたけれど、そんな事を考えていられる余裕もないくらいの吐き気に催されていた。
「はあ…っ、は…」
胸を押さえながら必死に呼吸を整えた。朝目覚めた時から気分が優れず、朝食は摂っていなかったから、嘔吐したものはせいぜい胃液くらいだった。